顎を動かしたとき「カクッ」といった引っかかるような音がしたり「ジャリジャリ」といった擦れるような異常な音がする場合があります。このような音は「関節雑音」と呼ばれそのその内あるものは「関節円板」という顎関節内部のクッションの様な組織の位置が前にずれている事により起こる事が分かっています。この種の関節雑音は放置しても約1/4が自然に消失すると言われていますが逆に約1/3は痛くて口が開かないといったより重篤な症状に移行すると言われています。そこでそのような兆候がある場合やなくても重篤になるのを予防したい、或は雑音そのものが不快で気になるといった場合は次にご紹介する「円板整位運動療法」を歯科医師の指導の下に行う事により雑音を解消できる場合があります。
では「関節円板が前にずれている事により起こる雑音」とはどういうものでしょう。正常な顎関節は常に下顎の頭の部分(下顎頭)に帽子のように関節円板を載せながら動いています。お口を開ける時下顎頭と関節円板は一緒に下図のように回転しながら前へ移動しています。
ところが関節円板が何らかの原因で本来の位置から前にずれた状態にあるとお口を開ける時、下顎頭は関節円板の下まで移動しそこで関節円板を帽子のように載せて正常な位置になり、両者はそのまま更に前方に移動します。しかしお口を閉じると関節円板は途中ではずれ、関節円板を前に残したまま下顎頭は前の位置まで戻ります。この下顎頭が関節円板に収まったりはずれたりする時に雑音が発生します(下図)。
従って前方に移動した関節円板が本来の位置に戻り関節円板と下顎頭が一緒に動くようになればこの種の雑音は消失することになります。そのために有効なのが次にご紹介する「円板整位運動療法」です。具体的な方法とその時の下顎頭と関節円板の状態を並べてご説明いたします。
(1)最初の状態です。
関節円板ははずれ既に下顎頭の前方に位置していま
す。
(2)お口を大きく開けます。
関節円板は下顎頭の上の正しい位置に戻ります。
(3)お口を開けたまま顎を前に突き出しそのままお口を 閉じ、上下の歯の一部が接するまで顎を前に突き出 したままお口を閉じます。
関節円板は正しい位置を維持しています。
(4)上下の歯を接したままお口を少し後ろに戻しそこか らもう一度お口を大きく開けます。この時
(A)「カクッ」と音がしたら
お口を後ろに戻しすぎて関節円板が下顎頭からはず れてしまっているため今度は顎を後ろに戻す量を減 らし再度(2)→(4)を繰り返します。
(B)音がせずお口を開けられたら
関節円板は正しい位置に維持されていますので今度 は先程よりは少し顎を後ろに戻す量を増やし再度 (2)→(4)を繰り返します。
この様にしてお口を開けたとき「カクッ」と音がしないギリギリの位置を見極め、これを超えない範囲で(2)→(4)を繰り返します。これを毎食後5分+通勤・通学、テレビ鑑賞中など時間のある時なるべく長く行って下さい。そして徐々にお口を前に突き出さなくても音がしないように関節円板を誘導して下さい。途中顎に痛みが出るようなら暫く休み症状が消えたら再開して下さい。本療法は順調に行っても月単位の時間が必要ですので焦らず気長に腰を据えて取り組んで下さい。