虫歯の範囲が狭く歯の一部を修復すれば済む場合、当院では現在樹脂による充填(コンポジットレジン充填あるいは簡単にレジン充填)か金属による修復(インレー修復)を主に行っております。前者は樹脂とはいってもフィラーと呼ばれるガラスのような固い無機質粒子を分散させ、強度と審美性、更に歯に近い熱膨張率を付与することにより歯と充填材との境界面での結合安定性を高めております。一方後者のインレー修復は長い歴史を持つ術式で、金属の持つ強度を背景に高い信頼性を有しています。しかし性能の向上したコンポジットレジン充填に対し昨今では金属色の露出による審美性の不足、あるいは「型をとって作った物をはめ込むという製作方法」では避けられない健全歯質の切削なども「必要最小限の生体侵襲」という観点から問題視する意見も出ております。
保険でのインレー修復は主に「金・銀・パラジウム合金」と呼ばれる金12%銀約50%パラジウム約20%からなる貴金属を使用しております。この金属は歯に較べて硬いため金属と歯の境目の歯側にマイクロクラックのような微小な「かけ」が生じそこから虫歯が発生する場合があります。この欠点を補うため20K程度の柔らかい金を使う場合がありますが、今でもこのゴールドインレー修復は奥歯に関しては長期の安定性という点で最も信頼性の高い方法です。
レジン充填とインレー修復のごく大まかな比較をまとめると下の表のようになります。
レジン充填 | インレー修復 | |
画像 | ||
すり減りにくさ | すり減りにくい | すり減りにくい |
圧縮強度 | 強い | 強い |
曲げ強さ | やや強い | 強い |
はずれにくさ | はずれにくい | ややはずれにくい |
色 | 白 | 金属色 |
修理のしやすさ | 部分的な修理が可能 | 部分的な修理は困難 |
治療回数 | 1回 | 2回 |
保険・私費 | 保険 | 保険・私費 |
当院では現在奥歯も含め全体の95%以上をレジン充填で行っております。レジン充填は光触媒により硬化させるため、奥歯の深い部分は光が届かず未反応な部分が残る危険性があります。そのため通常の光照射器ではなく高出力光照射器を用い充填操作を複数回に分割したり、様々な方向から十分な時間照射したりする事により硬化不十分な部分が残るのを極力防いでおります。
なお余談ですが最近まで広く行われていたアマルガム充填は充填材の性能が低いのと、成分に水銀を含む事から当院では開業以来一回も行っておりません。